
成功事例の紹介
プロジェクトの背景
店舗を年間数棟建設している大手企業様。 意匠・設備は工夫してコスト削減してきたが、構造は手つかずのままだった。 設計事務所を介して当初依頼してた構造設計事務所にコスト削減案を出してほしいと言ったが、何も変わらなかった。 そこで、セカンドオピニオンの依頼がさくら構造にきた。
物件概要
構造種別:鉄骨造 階数:平屋建て 施工面積:9479㎡ 用途:店舗
登場人物

A氏
(店舗開発担当者)

田中社長
(さくら構造株式会社)
内容
さくら構造だとどれくらい躯体数量を削減することが可能か過去案件で検討することになった。 ただ、相談頂いた建物は一見してコスト削減が難しい建物だということがわかった。 鉄骨平屋の店舗は社内にも多くの実績があるが、それと比較しても部材選定は妥当であり、支持層も浅く基礎回りでの削減も見込めなかった。 構造図だけでなく、クライテリアや設計条件確認のため計算書も拝見したが、元設計を担当された構造設計者の技術レベルや内容も問題がなかった。 普通に検証しても期待されているご提案はできないと考え、経験のある技術者を集め、コスト削減するためのブレスト会議を行い選択肢をできるだけ多く列挙することからスタートした。
コスト削減検証結果
- 鉄骨本体工事費
- 2900万円削減(33%削減)
- 躯体全体工事費
- 4800万円削減(24%削減)
検証結果は、大手企業様社内でも共有しやすく理解してもらいやすいよう、設計内容の説明動画を作成し報告した。
その後、A氏から連絡があった。

田中社長
私個人としては限りなく100%に近いと考えておりますが客観的な視点で鉄骨コストが落ちない可能性の場面を想定するとすると2つ考えられます。
1.建設地が多雪地域である場合や屋根に重量物を載せる場合
2.確認申請・適合性判定で弊社提案の鉄骨補強が認められない場合

田中社長
1番については設計条件がまったく違いますので、多雪地域の鉄骨量を非多雪地域の鉄骨量と比べると当然にコストは落ちなくなります。
ただし同一の多雪区域内で他社の設計と比較した場合には弊社の設計の方が建設費が落ちることには変わりありません。
屋根に重量物を載せる場合も共通して言えることです。

田中社長
2番についてですが、審査機関も判断がわかれるケースがあります。
A審査機関では問題にならない事がB審査機関では問題になるケースが無くはないです。
ただそれだとしても丁寧に説明をするとよっぽど融通のきかない審査機関でない限り理解をしてくれます。

田中社長
さくら構造は創業から14年を過ぎましたが、弊社の構造設計が原因で審査が下りなかったことは創業から一度もありません。
また難易度の高い設計に関しては事前に審査機関と協議を行いますので、本審査が始まってから審査で問題になる可能性を回避することもできます。

A氏
よくわかりました。ありがとうございます。
A氏は少し言いにくそうに、以前提示していた構造設計費についても触れた。

A氏
構造設計費の差額が他社に比べあまりにも大きいのですが・・・。

田中社長
おっしゃる通りで、社内の承認を取るのが難しいかと思いますので理由をご説明させていただきます。
コスト最適化を行う上で避けて通れない作業がケーススタディー解析です。
これは、案件毎にその都度異なる設計条件(敷地、プラン、地盤、荷重、クライテリア等)に対し、複数のケーススタディを行うことで、最も合理的なフレーム架構を見つけるために繰り返し行う作業のことです。

田中社長
ケーススタディ解析では、断面配筋決定だけにとどまらず、基本計画時、実施計画時において躯体数量算出(積算作業)を行った上で、最終的な構造計画を比較検討し方針決定します。
このような通常行われる手順とはあきらかに異なる手順や作業を行うために、作業量の増加は避けられません。
作業を簡略化し、設計料を減額することができないわけではありませんが、弊社に期待されていることは「設計料の減額」ではなく「工事費の減額」であり、この手順を踏まずにお客様の期待する成果を実現することは不可能であるためこの料金設定とさせて頂いております。

A氏
ありがとうございます。十分に理解できました。
承認をもらえるのは中々厳しいかもしれませんが、この内容で弊社社長に説明してみます。

田中社長
設計料についてもう少し練ってもよろしいですか?
社内稟議が通りやすいように最善を尽くしたいです。

A氏
わかりました。では、よろしくお願いします!
後日、田中社長は3パターンの構造設計料の提案をした。
-
年間複数棟割引きを適用した設計契約(最低5棟の設計契約)
年間5~6棟建築予定と伺っていたたので、今後1年間程度の設計物件(最低5棟)の構造設計をご発注いただける事を前提に、弊社の通常設計料金の約70%の額で業務をお請けする。 - 構造設計契約を弊社通常設計料金(定価)で1棟ごとにお請けする
-
鉄骨工事削減額の50%相当を設計料としたご契約
鉄骨量削減金額に対する完全成果報酬によるご契約。
成果が出なければ報酬は頂かない。

A氏
ありがとうございます。
3つ目の成果報酬型の提案は、田中さんの覚悟が感じられます。
では、この内容で社内に説明してきます。

田中社長
Aさんの熱意に応えたかったのでご提案させて頂きました。
よろしくお願いいたします。
後日、A氏から「構造設計者を御社に指定して業務を進める話を弊社社長に行い、スキームに関しては承諾を得ました。」と連絡があった。
それから、3棟の構造設計を発注していただき、構造躯体最適化による3棟の合計削減額は1億2500万円となった。
A氏への設計説明文章(一部抜粋)
建物全体削減金額
店舗名 | 層数 | 構造種別 | 面積 | 積雪 | 削減率 | 削減額 |
---|---|---|---|---|---|---|
A店 | 平屋 | 鉄骨造 | 5086㎡ | 140cm | 15.8% | 3180万円 |
B店 | 2階 | 鉄骨造 | 7366㎡ | 140cm | 17.4% | 5310万円 |
C店 | 平屋 | 鉄骨造 | 4453㎡ | 150cm | 20.2% | 4050万円 |
計 1億2500万円 |
鉄骨工事費削減額について
当初予測と、設計後の鉄骨削減量を比較すると、
A店(当初予測)8~15kg/㎡減 →(設計後)18.4kg/㎡減
B店(当初予測)8~15kg/㎡減 →(設計後)21.7kg/㎡減
C店(当初予測)5~10kg/㎡減 →(設計後)13.2kg/㎡減
結果としては、3棟とも当初予測以上の削減となりました。
また、B店は意匠事務所、御社A様のご協力もあり、ブレースを入れる事が可能となり、より大きい削減をすることができました。
鉄骨工事の削減額は3棟合わせて8670万円となりました。
基礎・地中梁工事費削減額について
地中梁および基礎の見直しにより3棟合わせて3870万円の削減となりました。
削減を可能とした大きな要因は2つあります。
- 基礎工法を比較し選定する。
- 地中梁を小さくし、側面型枠を無しとする。
今回の設計を通して、型枠の削減の有効性が確認できましたので、再現性のある有効な削減手法として、今後も採用していきたいと思います。
そのため、現場での施工性も含めてフィードバックをいただければ、より良い削減手法が確立されますので、ご協力をお願いいたします。
工事費削減についての考察
発注を頂く前に相談を受けた段階で「想定鉄骨削減提案」をさせて頂いております。 「各店舗の削減数量及び削減額詳細」にもある通り、概算提案時数量と実施設計後数量では、いずれの店舗も実施設計後数量の方が少なくなっており、3物件全てで提案時の想定削減額以上の結果となりました。
概算提案時は、大まかな方向性と過去の実績から削減できる数量を予測しているため、詳細なケーススタディーは行っていません。 一方、実施設計では作業量は増えますが、詳細な検討とケーススタディーを積み重ね、より合理的な鉄骨フレームの選択を行います。 つまり、実施設計時は概算時と異なり、より多くパターンを作成し最適解を求めており、その結果が概算時を上回る実施設計時の削減量として表れています。
特に大きな建物ほど梁の掛け方等で検討パターンは増えていきます。 より多くの検討の中から最適な計画を選択するため、削減率は概算時より実施設計の方が大きくなる傾向があります。
弊社のセレクトビーム工法は基礎周りにおいても、上部構造とあわせケーススタディーを行い、建物全体として合理的な工法を選択していきます。 従って、基礎のみや上部構造のみといった限られた範囲ではなく、基礎回りも含めた建物全体の躯体費最適化を実現しています。
成功の要因
この事例を振り返ると、3棟合計1億2500万円の工事費削減にあたっていくつかのポイントがありました。
- 店舗開発担当A氏が躯体数量に着目した
- 構造設計のセカンドオピニオンを依頼した
- 事業主や上司に躯体費削減ついて理解してもらい、社内稟議が通りやすいよう構造設計事務所をうまく活用した
- 構造設計者を指名し構造設計を発注
以上が、建築工事費を3棟合計1億2500万円削減できたポイントです。
A氏
確実に構造体建設費が下がると明言しますが、その確実さは100%なのでしょうか。